(前回の続きから)
どれほどの時間が過ぎたのだろう。
「スネ夫さん、たけしさん……」
返事は返らない。
「かわいそうに……」
「さぞ苦しかったろうね」
ドラえもんとのび太が二人に話しかける。先刻までの大騒ぎが嘘であったかのように静かな口調で語りかけた。
「ジャイアンのへたな歌も二度と聞けなくなったんだなあ……」
「そう、あのへたくそなひどい歌……」
故人を前に、かける言葉がどうかしてしまうほど悲しみが深かったのだろう。普段ならジャイアンを前に言うはずもない言葉がのび太とドラえもんの口から出た。そんな動揺している二人に向かい、ジャイアンが大声で怒鳴った。
「へたくそで悪かったな!!」
怒れるジャイアンを目の前にして声を失うドラえもんとのび太。同時にスネ夫も目を覚まし、しずかが間髪入れずに叫んだ。
「生きてたの!!」
驚きのあまり大口を開けて見つめ合う五人。ジャイアンだけが違ったが、そんなことはだれも気が付かなかった。
「こ、こんなことってありえない!」
「信じられない!!」
「でもよかったわ!ほんとによかったわ!!」
互いに手を取り、泣いて喜び合うのび太たち。
だが喜びもつかの間、ジャイアンがバギーを視界に見つけると途端に険悪な表情となって近づいていく。スネ夫に至ってはジャイアンの比ではない程に怒りを露わにしていた。
「あいつだ!あいつの為にこんな目にあったんだ!!」
バギーは軽やかにアイドリングを吹かし、当然のように答えた。
《行ケトイワレタカラ行ッタンダ。モンクアルカ》
「なんだと!」