(前回の続きから)

 

 「ハラハラしたけどおもしろかったね。」

 「楽しい一日だった。」

 

 のび太たちが無事にキャンプ地へと戻ってくると、朝にまいた海草の胞子と魚の卵が無事に成長をして美しい景色をつくっていた。スネ夫が「すてきな庭になったなあ」と感嘆し、しずかがその美しさを竜宮城のようとたたえ、ジャイアンは景色の楽しさに満足した。

 ドラえもんが外でのバーベキューを提案すると一同は全員で賛成し、テキオー灯の効果で明るく感じすぎる視界を『消光電球』(点灯するとまわりが暗くなるひみつ道具)で落ち着いた暗さへと変え、『水中キャンプファイア』を点火して、夜のキャンプ感を一気に盛り上げた。

 クッキングマシーンで用意した食材をキャンプファイアの炎で焼き上げ、皆が舌鼓を打つ。七人前は平らげただろうジャイアンがリサイタルを始めようと立ち上がり、スネ夫が阻止すべく立ち回る。ジャイアンも興味を示すような夜の怪談話をはじめたのだ。

 

 人間、窮地に陥ると本性がでるというがこの時のスネ夫は相当に頭がまわった。聞きたくないジャイアンの歌をジャイアンの機嫌を損ねることなく中止させ、かつ自分の欲望を叶えるために他者の興味を引き付ける怪談話をはじめ、宝を積んだ沈没船までドラえもんを誘導しようと試みた。結局はドラえもんの親たちから子供をまかされた責任感によって拒否されるのだが(危ないとわかっている場所に君たちを連れていくことは絶対にできない、と明言した)、かえってスネ夫ジャイアンの欲望を刺激する結果となった。

 

 翌朝、魚たちに餌付けをしているしずかとのび太のもとにドラえもんが飛び込んでくる。ジャイアンスネ夫がいなくなったというのだ。

 しずかが三時間ほど前にバギーのエンジン音を聞いたとドラえもんに伝え、彼らが大西洋バーミューダ島方面へと宝探しに出かけたことを知る。ほっとけばいいとのび太が言うと、恐るべき事実をドラえもんが伝える。『テキオー灯』の効果は二十四時間であり、あと一時間(!!)で効果が切れてしまうということを。

 バギーは平坦な地形では弾丸並みの速度で移動できる。三時間という時間差はドラえもんをして「あのバギーに追いつく方法はまったくない!!」と言わしめた。

 

 バギーはスネ夫ジャイアンを乗せ、バーミューダへと走りつづける。