(前回の続きから)
ドラえもんたちがバギーの追走を開始したころ、ジャイアンとスネ夫はドラえもんを出し抜き水中バギーを手に入れたことで有頂天になっていた。
「正直、ここまでうまくいくとは思わなかったよ」
「この生意気なバギーがおれたちの言うことをあっさり聞くんだもんな」
「海のことならなんでも知っている。海底の地図や海流の動きまで熟知しているっていうんだから、もう宝は見つけたも同然さ」
「歌手としてデビューする前に全国放送のニュースでインタビューされちゃうわけか。スターとしてステージに立つまえに人気者になっちゃうのもどうなんだろうな」
「? う、うん。どうなんだろうね……」
にこやかにジャイアンがおのれの宿命に思いを巡らせると、スネ夫は呆れたように返事をした。自分でもかなりハイな気分になっていると思っていたスネ夫だが、ジャイアンほどではなかったと自覚させられる。すこしだけ気分が落ち着いた。
「ほんとにバーミューダまでの道を、知っているんだろうね」
《海ノコトナラマカシテクダサイ》
「んふふふ。ドラえもんを出し抜いてやったぞ。ぼくたちは危険なんか恐れないだもんね」
「……ん?」
「ね、なんだかうす暗くなってきたよ」
周囲の様子が次第に暗くなってきたことにスネ夫が気が付く。
「そういえばへんに息苦しいんだ。気のせいかなあ」
ジャイアンが自分の胸を手でおさえて言った。
海のことならなんでも知っているバギーが、聞かれてもいない質問にすぐ答えた。
《ハハァ、『テキオー灯』ノキキメガキレカカッテルンデスネ》
「ええっ!? きれるとどうなるの?」
《ワカリキッタコトヲ……》
《マッ暗ニナッテ息ガトマッテ、オソルベキ水圧ノタメニグシャグシャニツブレマス》
「…………」
「なんで注意してくれなかったんだ!」
《ダッテキカレナカッタモン》
「テントへ引き返せ!!」
《手オクレデス》
《出発シテモウ三時間タッテイル》
バギーは淡々と言葉をつづけた。
《デモイインデス。ワタシハ平気デスカラ》
二人は血の気が引く音を確かに聞いた。
「助けてくれえ!!!」