(前回の続きから)
ドラえもんの知恵も、のび太の勇気もしずかの優しさも、ジャイアンの勇猛さもスネ夫の賢さも、すべてがなにもかも無力だった。どんなに念じても時間が無情に過ぎ去っていく。ジャイアンとスネ夫の眼前には暗闇しか見えず、心臓の鼓動が締め付けられるように苦しく呻き、鼓膜の奥から信じられない激痛が走る。なによりどんなに息をしようともがいても、ただ肺が縮みあがるだけで楽にならない。自身の脳から悲鳴があがるのがわかった。あと十分!、九分!、八分!、七分!、六分!、テキオー灯の有効時間切れが迫る。
「ウ! ク……ク、ク、ゲ…」
ジャイアンとスネ夫は白目をむき、断末魔の叫びをあげた。意識を失い、猛スピードで海底を走るバギーから転がり落ちる。水中バギーのAIが搭乗者二名が落車したことに気がついた。
《アレ、落ッコチタノ?》
《シヨウガナイナア》
速度を緩め、Uターンをして現場へと戻る。
搭乗者だったニ名はなにも言わずぴくりとも動かず、口から空気の泡を出しつづけ、その泡も急速に失われていった。
《死ヌンデスカ》
《人間ナンテイバッテテモ、コウナルトダラシナイモノダネ》
テキオー灯の有効時間切れまで、あと四分……。