(前回の続きから)
バギーはジャイアンとスネ夫を乗せたまま大西洋へと走りつづける。キャンプ地への帰還を拒んだバギーは最高速を維持したまま、南アメリカ大陸西方、東太平洋海膨を一気に駆け抜け最南端ホーン岬にまで迫ろうとしていた。
ジャイアンとスネ夫はバギーに何も期待しない。死地が目の前にあるという現実に正気を保てなくなっていた。ドラえもんがきっと助けに来てくれるとジャイアンは叫び、あいつの道具なんて肝心な時に役立つわけがないとスネ夫が絶叫する。バギーは落ち着いた声で搭乗者に語りかける。
《ヨロコンデクダサイ》
《マモナク東太平洋海膨ヲコエテホーン岬ヲマワレバ、大西洋ニ入リマス》
ドラえもんたちはバギーを追走する。
しずかがこの危機を脱するアイデアを思いつく。
「そうだわ!!あれが使えないかしら」
「とりよせバッグ!」
「それだ!ドラえもん早くだして!!」
ドラえもんが苦しそうに返事をする。
「だめ!できない」
「バギーは猛スピードでつっ走っているんだ。飛んでる弾丸を手づかみにできる?」
のび太がひらめく。
「そうだ!!『どこでもドア』!!」
「ドアは海の上においてあるんだ。四千メートル浮かびあがるのに何時間かかると思う?」
三人が心のなかで叫ぶ。
「……あと十五分!!」