(前回の続きから)

 

 スネ夫の父親は会社を経営する社長であり、その裕福さは町内でも広く知られている。スネ夫自身も親から買い与えられたおもちゃを惜しげもなく友達に披露し、コレクターの素養があるスネ夫の自慢話をのび太たちはしょっちゅう聞かされている。もちろん食事に関しても妥協はなく、ただおいしいだけでは飽き足らず、食材の知識や調理法まで知ろうと努力している。今回の海底キャンプの食事でプランクトンを加工した人工食材のおいしさに一番驚いたのもスネ夫だった。

 そのスネ夫がバギーの暴走にあってから周囲に関心がなくなったかのように黙り込み、あれほど驚いた食事にも探求心を示さず、無言で肉を食する様子は異様に映った。しずかは心配そうにスネ夫を見つめ、自然と目が合ったドラえもんは、しずかに向かって大きく頷いた。ジャイアンは夢中でカツ丼を頬張っているので心配はいらないようだった。ドラえもんは思う。スネ夫はテキオー灯の効果切れによる臨死体験のショックを引きずっているのか、それとも……。

 

スネ夫、調子はどうだい。元気がないようだから心配して見にきたんだ」

「調子は悪くないよ。元気はないけどね…」

 個室に備え付けの円形スツールに腰かけてスネ夫はぼうっとしていたようだ。

「体調が悪くないのなら、どうしてみんなと話をしないの。僕もしずちゃんも心配しているんだ。言いたいことがあるならなんでも聞くよ」

「なんでもいいんだ。じゃあ、聞くね」

 スネ夫はスツールに腰かけたまま、両手で向きをドラえもんの方に変えると言った。

しずちゃんの手前どうしても聞けなかったんだ。ロボットには善悪が分からないって話、あれ、どう考えても違うでしょ? 今さらだけど僕は沈没船の宝欲しさにドラえもんを騙してバーミューダまで行こうとしたけど、はっきりと言われたじゃないか。僕たちの親から信用されて連れてきた以上、危ない場所へは行かせないって。それって人との約束みたいなものは、絶対に守るってことでしょ? 約束を破ることは悪いことだって分かっているからドラえもんはバーミューダ行きを断ったんだよね。じゃあ、バギーが僕やジャイアンが死にかかってるのに無視してバーミューダまで行こうとしたのは何だったの? そりゃバギーはドラえもんと違うロボットだから比較できないかもだけど、ドラえもんとバギーを見ているとお互いきちんと意思の疎通ができていると思う。僕がモヤモヤしているのは、自分が酷い目にあったことよりも、同じロボットなのに全然違う対応をされる気持ち悪さに納得がいかないからなんだ」

「……まあ、

 ジャイアンは殴ったらスッキリしたみたいだけどね」