(閑話休題、前回の続きから)

 

 ドラえもんは本当に頼りになるロボットだけど、信じられない失敗をする時がある。

 テキオー灯の効果時間に限界があることを皆に伝えていなかったのはたいへんな失敗だった。旅立ちが急だったので仕方なかったかもしれないが、「とても重大で海底生活のなかでこれを忘れるとたいへんなことになる」と前置きしたときも、テキオー灯の説明に思い至らなかったのは、どうしてだったのだろう。度の過ぎるうっかりが、最悪のかたちで危機をまねいてしまった。

 

 ジャイアンスネ夫がいなくなったことに気付いてからすぐ、のび太たちはバギーの後を追いかけた。三時間の時間差があって、足の速さも勝負にならないという勝ち目のない追いかけっこだ。すでに三十分が過ぎ、バギーの背中はおろか土煙ひとつ見ることはできない。

 

 水中バギーには目的地までの自動走行機能が備わっている。外部からの支援を受けなくても、乗員を安全に送りとどけることを目的としたものだ。本来なら(たとえテキオー灯の有効時間が切れかかっていたとしても)乗員の安全は確保されるロボットカーのはずだった。深海域でのレジャーを考慮して設計された車なら、なおのことだ。AIは工場出荷時には「目的地に到着する」ことよりも「乗員が安全に帰還できる」ことを最優先課題としてつくられている。もしそうでない行動をバギーが取るのであれば、AIの故障でないかぎり、後天的な事象によって変化したものだろう。それが何であるのかはバギーにしかわからない。