(前回の続きから)
陸に上がり文明を築いた陸上人と深海で独自の文化を育てた海底人とのファーストコンタクトは、一方の生命の危機をもう一方が救うという形で行われた。ジャイアンとスネ夫にとってこの出会いは奇跡的であり、テキオー灯に類する道具をムー連邦が所有していたことは偶然で済ませるには出来過ぎていた。ドラえもんはバギーを運転し、生還したジャイアンとスネ夫を乗せハワイ沖のキャンプへと戻る道すがら、当然の疑問を口にした。
「誰かがテキオー灯を浴びせてくれたとしか思えないんだけれど……。そんなことあるわけないよな」
「さっきの爆発となにか関係があるのかな」
「岩を破壊するなんてちょっとやそっとの力じゃないよ。ぼくたちがどこでもドアでやってくる前にだれかが岩を破壊して、その後にジャイアンたちを助けてくれたんじゃないかな」
「助けてくれる人が破壊活動をするわけないだろ。百歩譲ってそうだとして、助けてからいなくなるのもおかしい。ジャイアンとスネ夫には二十四時間分のテキオー灯の効果が認められるんだ。広大な海底世界でピンポイントで遭難した人を見つけて適切な処置をしてくれた」
「すごく親切な人よね」
「うん。まずは会ってお礼を言いたい。その上でジャイアンたちを見つけて助けてくれた経緯を聞きたいなあ」
ハンドルを握ると性格が変わる人がいるというが、ドラえもんの場合は思ったことをそのまま口に出す性格が出るらしい。後部座席でふて腐れているのび太には目もくれずドラえもんはバギーを運転する。この後、ハワイ沖のキャンプ地へと戻った一行は食事休憩を取りマリアナ海溝の探検へと出発した。